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【落语豆知识】か行

かいぎゃく【諧謔】

 洒脱で気の利いた言葉。おどけ。洒落。ユーモア。


かいこういちばん【開口一番】

 落語会などで、その一番最初に演じる者。

 多くの場合前座が務めるが、前座がいない会もあり、二ツ目や真打の場合もある。


かいせき【懐石】

 暖めた石で腹を暖めるのと同じように、腹を暖める程度の粗末な食事の意。

 茶の湯の前に出すわずかな食事。茶懐石。


かいせき【会席】

 1)多数の人が会合する席。多くは連歌・俳諧・茶の湯などの席。

 2)会席料理の略。


かいせきりょうり【会席料理】

 もと、会席に出された料理。本膳を簡略にした料理。やがて、酒席の上等な料理いうようになった。

  「日本橋の浮世小路に百川という―‐がございます。(百川)」


かいちょう【開帳】 一行あらすじへ

 寺院で、特定の日に厨子を開いて中の秘仏を一般の人に拝ませること。


かいまき【掻巻】

 褞袍どてらより大きめに仕立てた防寒用寝具。  「―‐を頭からかぶって……。(品川心中)」


かいろうどうけつ【偕老同穴】

 1)生のある間は共に老い、死後は同じ穴に葬られるの意。

  夫婦が仲むつまじく連れ添うこと。  「―‐の契りを結びし上からは、(錦明竹)」

 2)カイロウドウケツ科に属する海綿動物の総称。胃腔中に雌雄一対のドウケツエビが住み着くところから、

  そのエビを「偕老同穴」と呼んだが、のちに海綿にその名が付いた。


かえしうま【返し馬・】 一行あらすじへ ⇒ひだりうま


かえんだいこ【火焔太鼓】 一行あらすじへ

 火焔形の装飾板を付けた雅楽用の太鼓。

  「―‐とか申して、世に二つという名器だそうじゃ。(火焔太鼓)」


かおづけ【顔付け】

 協会幹部と席亭で、寄席の出演者や出演時間の割り振りを決める会議。

 また、その結果やそれを記載した表。


かおぶれ【顔触れ】

 顔付けで決まった出演メンバー。


かおよごぜん【顔世御前】

 仮名手本忠臣蔵の登場人物。塩谷判官の妻で烏丸家の長女。

 高師直に横恋慕され、小夜衣の歌を返し拒絶する。


かがのちよ【加賀千代】 一行あらすじへ

 江戸中期の女流俳人。加賀国松任まつとうの人。剃髪後素園と号し、理知的で通俗的な句風。

 千代女。千代尼。(1703~1775)「千代尼句集」「松の声」を著す。


かきゅう【火急】

 火が燃え広がるように急な意。事態がきわめてさし迫っているさま。

  「―‐なことにて、食事の支度は致しておりません。(目黒の秋刀魚)」


かきのもとのひとまろ【柿本人麻呂】

 平安初期の歌人。和歌三神の一。人丸。

 百人一首に「あし曳の山どりの尾のしだりをの ながながし夜を独かもねむ」が、

 人麻呂の句として選歌されている。


かぎや【鍵屋】

 花火屋の屋号。万治二年(1659)鍵屋弥兵衛が日本橋横山町に玩具花火の店を創立。

 享保18年(1733)両国の川開きの花火を打ち上げるようになり、名声を高める。

 文化七年(1810)玉屋を暖簾分けさせ、両国橋上流を玉屋、下流を鍵屋が受け持つ。

 天保十四年(1843)玉屋が自火を出し江戸追放。両国の花火は鍵屋一軒に戻った。

  「橋の上玉屋玉屋の声ばかり なぜに―‐と言わぬ情(錠)なし。(狂歌)(たがや)」


かくべえじし【角兵衛獅子】

 越後獅子の別名。

 越後西蒲原郡月潟村の角内・角助兄弟が父角兵衛の仇討ちのために各地を回ったからとの説もある。


かくまんじ【鶴満寺】 一行あらすじへ

 大阪市北区長柄にある天台真盛宗の寺。山号を雲松山うんしょうざん。本尊は阿弥陀如来。

 境内は桜の名所であったが、明治十八年(1885)淀川の氾濫で枯死した。


かくや【覚弥】

 幾つかの古漬を塩出しして細かく刻み、醤油などで味付けしたもの。戸時代初め、岩下覚弥が創ったという。

 また、高野山の隔夜堂を守る老僧のために出したので「隔夜」とも書く。

  「―‐のこうこなんて、乙なもんだ。(酢豆腐)」


かくや【隔夜】

 1)一晩おき。

 2)覚弥と同じ。高野山の隔夜堂を守る老僧が食べやすいように、細かく刻んだと言われる。


がくや【楽屋】

 舞台の後方やそれに近い場所で、舞台に上がる者が準備をしたり、休息をするところ。

 舞台の演奏をする場所から付いた呼称。転じて物事の内幕。


がくやおち【楽屋落ち】

 寄席の楽屋関係者にしかわからないくすぐりや、仲間をネタにしたうわさ話、悪口の類。


がくやすずめ【楽屋雀】

 楽屋に入り浸りの、舞台関係者以外の人。


がくやちょう【楽屋帳】

 同じ日に付く噺が重複しないように、日付・出し物・演者を記載しておく寄席の楽屋控え帳。

 根多帳。鶯宝恵帳おぼえちょう。


かくやどう【隔夜堂】

 高野山で、老僧二人が交互に隔夜のお勤めをするお堂。


かけうり【掛売り】

 一定期日または指定日に代金を返済約束で物を売ること。

 商家は暮れまたは盆暮れの掛け売りをしていた。  「商家が―‐でございますんで。(狂歌家主)」


かけがわ【掛川】

 静岡県西部の一地区。東海道の宿場で、山内一豊やまのうちかずとよが形成した城下町。


かげきよ【景清】 一行あらすじへ ⇒たいらのかげきよ


かけぢゃや【掛茶屋】

 路傍、社寺の境内などに小屋掛けした粗末な茶店。

 葭簀よしず掛けからとも腰を掛けるからとも。腰掛茶屋。

  「葦簀張りの―‐がずうっと並んでます。(高田馬場)」


かけとり【掛取り】

 掛売り代金を集めて歩くこと。また、その人。

  「あっちからも、こっちからも―‐がやってくる。(狂歌家主)」


がげん【雅言】

 洗練された優美な言葉。特に、和歌や仮名文になどに用いられた言葉。


かごかき【駕籠舁き】

 駕籠をかつぐ人夫。駕籠屋。  「父を―‐にしてしまった。(抜け雀)」


かこがわほんぞう【加古川本蔵】 一行あらすじへ

 仮名手本忠臣蔵の登場人物。桃井家の家老。主君狭之介が、高師直を討とうとしたのを止め、

 鎌倉殿松の間では師直を刃傷の時に塩谷判官を抱き止める。

 のちにこれを悔み、自ら大星力弥に刺される。

 江戸城松の廊下の刃傷で赤穂城主を止めた、大奥御留守居役、梶川与惣兵衛に擬す。


かごや【駕籠屋】

 駕籠舁き。客の注文で駕籠を仕立てる家。  「夜中でも―‐が客待ちをしております。(品川心中)」


かさま【笠間】

 茨城県北西部にある一地区。牧野八万石の城下町。笠間稲荷の門前町・宿場町。


かさまいなり【笠間稲荷】

 茨城県笠間市笠間にある稲荷神社。

 笠間藩主牧野貞通の一族「門三郎}が深く信仰し、功徳を施したところから別名「紋三郎稲荷」と呼ばれる。

 東京都日本橋浜松町の笠間藩の上屋敷に祀られていた稲荷が、現在も同地に残る。


かし【河岸】

 河川、海、湖の岸の、舟から人または荷物を揚げおろしする所。  「―‐へ着いた舟から桶へ入れて、(水屋の富)」

 河岸に立つ市場。「魚―‐うおがし」「大根―‐だいこんがし」   


かじかざわ【鰍沢】 一行あらすじへ

  山梨県南巨摩こま郡にある宿場町。富士川水運の河港として発達。

  「―‐を船で下るな、とはお祖師様の戒めでございます。(鰍沢)」


かしまじんぐう【鹿島神宮】

 茨城県鹿嶋市宮中にある大社。東国三社の一。祭神は武甕槌大神たけみかづちのおおみかみ。


かしら【頭】

 一群の長。特に鳶職・左官などの親方。  「―‐呼んで来ておくれ。(猫と金魚)」


かずさ【上総】

 現在の千葉県中央部。「―‐戸」。


かずさど【上総戸】

 千葉県山武さんぶ郡産出の杉材で作った戸。  「―‐を漏れるあかりが、(鰍沢)」


かすり【絣】

 糸の染まった部分と染まっていない部分でかすれた模様を織りなした柄。


かぜ【風】

 寄席の楽屋符丁で扇子をいう。

 高座扇子は普通の扇子より親骨の幅が広く、先端の広い部分が2センチ、長さが23センチほどの白扇。

 親骨が竹そのものの色をした白骨と焼き色を付けた煤骨すすぼねがある。

 ほとんどの噺家は、真打ち昇進や襲名披露に配られる撒き物を使用している。


かたかげ【片陰】

 一方が物陰になっている意。日光が当たらない場所。夏の午後の日陰。夏の日射しが強くならない朝。

 「―‐のうちに行って来ようと思ったが、(唐茄子屋)」


かたがわまち【片側町】

 道路の片側だけに家が建ち並んだ町。片町。  「生えそろうまで―‐を歩きねえ。(浮世床)」


かたぎ【堅気】

 1)もの堅い性格。律儀りちぎ。生真面目きまじめ。

 2)まともな職業に従事し、堅実であること。また、そういう職業。芸娼妓・水商売・渡世人などに対していう。

    「―‐になって、おじさんに孝行するぜ。(藁人形)」


かたぎぬ【肩衣】

 袖そでと衽がなく、丈が短い着物。背の中央と前身頃左右胸部に家紋をつけ、肩から背にかけて着る。

 裃と呼ばれる式服の上に当たり、下は袴を着用。


かたくち【片口】

 一方だけにつぎ口のある鉢や銚子。  「こんな大きな―‐に、酒がいっぱい入ってんですよ。(質屋庫)」


かただ【堅田】

 滋賀県大津市の一地名。近江八景の一、堅田の落雁で知られる。


かただのらくがん【堅田の落雁】

 近江八景の一、琵琶湖に延びた浮御堂の景勝に落雁が舞う景観。


かたてんびん【片天秤】

 釣り具の一。道糸に取り付け錘おもりから離して鉤素を一本下げるのに用いる天秤。


かたびら【帷・帷子】

 裏地をつけない和服。ひとえもの。  「―‐のねんねこか、こりゃおもしろいな。(十徳)」


かたまち【片町】

 片側町。「浅草御蔵前―‐」


かちいい【搗飯】

 搗いた飯の意。餅。


かちん

 女房詞で 餅のこと。搗飯から出た詞。  「お―‐の中から釘の折れたのが……。(かつぎや)」


かつぎや【担ぎ屋】 一行あらすじへ

 1) 縁起などを非常に気にする人。  「あだ名が、―‐の五兵衛といいまして、(かつぎや)」

 2) 人をだましておもしろがる人。

 2) 野菜や魚介類などを、産地から担いで来て売る人。特に、闇物資を運んできて売った人。


かつらがわ【桂川】

 京都市南西部を流れる川。鴨川、宇治川と合流して下流では淀川となる。


かとうぶし【河東節】

 十寸見河東ますみかとうが創始した浄瑠璃の流派。生粋な江戸風で座敷芸として好まれ盛行。

  「一中節、―‐のことを申すのでげすよ。(羽織の遊び)」


かとりじんぐう【香取神宮】

 千葉県佐原市にある大社。東国三社の一。祭神は日本神話の軍神、経津主神ふつぬしのかみ。


かながわ【神奈川】

 1)関東地方の県。

 2)横浜市の区。


かながわじゅく【神奈川宿】 一行あらすじへ

 もと東海道五十三次の一。神奈川湊かながわみなとを中心に栄えた宿場町。

 当時は海岸線に沿った細長い町で神奈川の青木町と神奈川町一帯に当たる。

 安政六年(1859)横浜港開港以降神奈川湊は埋め立てが進んだ。


かなでほん【仮名手本】

 いろは歌を平仮名で書いた習字の手本。「―‐忠臣蔵」


かなでほんちゅうしんぐら【仮名手本忠臣蔵】

 浄瑠璃の一。赤穂四十七士の敵討を室町時代に設定、高師直を塩谷判官の家臣大星由良之助らが討つ。

 全十一段から成り後に歌舞伎化された。

 いろは歌が四十七文字であることと、七文字ごとに区切り、それぞれの末尾を読むと、

 いろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならむうゐのおくやまけふこえてあさきゆめみしゑひもせす

 「咎無くて死す」となるところから、仮名手本の名が付いたと言われる。


かね【鉄漿】

 おはぐろの液。


かねじゃく【曲尺・矩尺】

 1)直角に曲った金属の物差し。差し金。

 2)長さの単位。単に尺ともいい、曲尺の一尺は1メートルの三十三分の十に換算。


かぶき【歌舞伎】

 元は、阿国歌舞伎おくにかぶきから生まれた歌舞伎踊

 現在は歌舞伎踊に劇的要素を取り入れて確立した歌舞伎狂言をいうのが一般的。

  「―‐の方は屋号で呼びます。(たがや)」   


かぶきおどり【歌舞伎踊】

 出雲阿国いずものおくにの阿国歌舞伎をはじめ、女歌舞伎、若衆歌舞伎、野郎歌舞伎。

 念仏や流行の歌などに併せた踊りが主体の芝居。


かぶききょうげん【歌舞伎狂言】

 初期の歌舞伎踊に対して劇的な演目。また、その脚本。能狂言・操狂言に対して歌舞伎をいう語。


かまど【竈】

 (竈)かま(処)どの意。耐火性の物で周囲を囲った中で火を燃やし、上で物を煮炊きする設備。かま。へっつい。

 転じて、身代。所帯。「―‐を持つ」


かまとと【蒲魚】

 花柳界の女性が「蒲鉾はお魚ととなの?」と聞いたのが語源といわれる。

 何も知らないような顔をして、初心らしくふるまうこと。また、その人。


がまのあぶら【蝦蟇の膏】 一行あらすじへ

 ガマガエルの分泌液を膏剤にまぜて練った膏薬。昔から軍中膏として戦陣で用いられた。


かみいれ【紙入れ】 一行あらすじへ

 紙幣を入れて携帯する財布。また、鼻紙・薬・小楊枝など、外出の時に入用な物を入れて携帯する用具。

  「お金を取りに来たんだから―‐は空さ。(付き馬)」


かみがた【上方】

 古くは皇居があった京都をさす地名。京都をおよびその付近、また、広く畿内地方を呼ぶようになる。

 江戸幕府は愛知以西を上方、それより東を関東としたが、一般的には京都大阪を呼んだ称。

 「―‐落語」「―‐見物」


かみがたらくご【上方落語】

 上方に定着した落語。京の露の五郎兵衛、大坂の米沢彦八の辻噺が発祥。主に大阪を中心に継承発展した。


かみしも【上下】

 1)舞台の上手と下手。芝居で家をセットする場合、玄関は下手、裏木戸が必要な場合は上手に置く。

   落語もこれと同様、上手にいる人は下手を向き、下手の人は逆を向いて演じる。「―‐を切る」

 2)腰から上と下。「按摩―‐」

 3)武士の式服。上は肩衣下は袴はかまで、裃の字を当てる。 「長―‐」


かみしもをきる【上下を切る】

 上下の設定から、噺家が上手を向いたり下手を向いたりして演じ分けること。

 家の奥に近い方にいる者は下を切り、外や玄関先に近者は上を切って演じる。

 通常は比較して身分の高い者を上手に置いて下を切り、身分の低い者は上を切る。

 また、店先の武士と店内の商人・玄関先の亭主と奥の女房・船の客と船頭などの場合は、

身分より位置関係を優先する。


かみせき【上席】

 毎月朔日から十日までの寄席興行。一月を十日間単位で区切り、上席、中席、下席とする。

 また、三十一日まである月の最終日は、余一会の興行が組まれる。


かみて【上手】⇔しもて

 舞台に向かって右側。

 噺家が登場人物を演出する場合、家の玄関側、あるいは家の外に居る者が上手を向いて話す。

 これを「上を切る」という。


かみばな【紙纏頭】

 遊郭などで祝儀として渡す懐紙。後日金品を与えるしるしとする。

  「うけたまわりという―‐だよ。(付き馬)」 


かみやしき【上屋敷】⇔しもやしき

 地位の高い武家、特に大名が平常の住居とした屋敷。本邸。


かむろ【禿】

 郭で上級の遊女に仕えながら見習いをしている十歳前後の少女。

 「それは―‐と申します。(盃の殿様)」 


かめ【洋犬】

 外人が犬を「カムヒア(Comehere)」と呼ぶのが「カメヤ」と聞こえたからと言われる。

 「吠えたり噛み付いたりする―‐があるから、(縁切り榎木)」 


かめいどてんじん【亀戸天神】

 東京都江東区亀戸三丁目にある神社。江戸前期に太宰府天満宮を分祀し菅原道真を祀る。


かめじまがわ【亀島川】

 日本橋川の分流。埋め立ての際に残された水路で、茅場町から佃島へ向かって南下。


かも【鴨】

 1)ガンカモ科のうち、比較的小型の鳥の総称。総体的に首と足が短く、一般に雄の羽色の方が美しい。

  日本には秋飛来し春北へ帰る。

 2)利用しやすい相手。


かもい【鴨居】

 障子などを開閉させるため、開口部の上部に溝を付けて渡した横木。⇔敷居


かもがわ【賀茂川・加茂川・鴨川】

 京都市街を北から南へ貫流する川。高野川との合流付近上流を賀茂川、下流を鴨川と称す。

 桂川と合流し淀川となる。


かもじ【髪文字・髢】

 1)女房詞で髪の毛。

 2)入れ髪。そえがみ。


かや【蚊屋・蚊帳】

 蚊を防ぐために寝床に吊り下げて、上部と四方をおおうもの。材質は主に麻で、絽・木綿のものもある。

 「貧乏で―‐が吊れない。(二十四孝)」


かやばちょう【茅場町】

 東京都中央区日本橋中央部の一地区。日本橋川と亀島川の分流点から南西に位置する地区。

 海を埋め立てた葦や茅の生い茂る沼地で、江戸城築城の際、茅商人を移住させたことに因む地名と言われる。


かやり【蚊遣り】

 蚊遣り香や蚊遣り木などを燻しいぶして蚊を追うこと。また、そのもの。かいぶし。かやりび

  「―‐が今にも燃え出すところだ。(夏泥)」


かやりぎ【蚊遣り木】

  蚊遣りのために炊く木。  「―‐が無えんで、その辺の木をくべたな。(夏泥)」


かやりこ【蚊遣り粉】

 蚊遣りのために炊く除虫菊などを乾燥させた粉。


かやりこう【蚊遣り香】

 蚊遣りのために炊く除虫菊などを乾燥させて製した香。蚊遣り線香。蚊取 り線香。


からいた【空板】

 1)講談の前講が、客寄せのために釈台を張扇でむやみに叩くこと。

 2)客席に誰も入っていない高座。


からかみ【唐紙】

 1)中国から渡来した紙。種々の模様が胡粉・雲母の粉末などで施してあるもの。

  また、平安時代にはそれを模造して製造された和紙をもいう。

 2)唐紙障子の略。中世以降、唐紙(1)を襖の上張りに用いるのが主流となり、襖を唐紙というようになった。

    「その―‐をずうっとおあけして。(宿屋の仇討)」


からかみしょうじ【唐紙障子】

 板障子・襖障子に唐紙を貼った障子の称。

 とくに襖障子には唐紙を貼るのが主流となり、襖を唐紙と呼ぶようになる。


からくり【絡繰・機関】

 1)糸のしかけをやつって動かすこと。また、その仕掛け、仕組み。

 2)工夫を凝らして仕組むこと。細工。計略。たくらみ。

 3)絡繰人形の略。

 4)覗絡繰の略。


からくりや【絡繰屋・機関屋】 一行あらすじへ

 1)種々のやりくり算段をよくする人。

 2)物事をたくらんで人をだましあざむく人。

 3)覗絡繰を業とする人。


からさき【唐崎・辛崎】

 滋賀県大津市の一地区名。琵琶湖南西岸にある景勝地。近江八景の一、

 唐崎の夜雨で知られる唐崎明神がある。


からさきじんじゃ【唐崎明神】

 滋賀県大津市唐崎1丁目ある神社。近江八景の一、唐崎の夜雨で知られる、黒松があった場所。

 七月二十八・二十九日の両日に「みたらし祭」が行われる。


からさきのまつ【唐崎の松】

 琵琶湖に面した唐崎明神の境内にある黒松の称。近江八景の一、唐崎の夜雨で知られる。

 現在の松は三代目で樹齢百五十年~二百年といわれる。


からさきのやう【唐崎の夜雨】

 近江八景の一。唐崎の松に降りしきる夜雨の風情をいう。


からめて【搦手】

 城の裏門また、それを攻める軍勢。敵の背面。⇔大手

 転じて、相手の攻めやすい側面、すなわち弱点や注意の届かない部分。「―から論ずる」


かり【雁】

 がんの異名。  「松に―‐とは、取り合わせが相違致しておるようじゃが。(雁風呂)」


かりがね【雁が音・雁金】

 1)雁の鳴き音。

 2)がんの異名。

 3)がんのうち、比較的小型種の鳥。


かりくら【狩競】

 狩猟。また、その競争。  「山中へ―‐に出た太田持資公。(道灌)」


かりたく【仮宅】

 江戸時代、吉原の遊郭。が火災にあった時、一般居住地で仮営業を許された遊里。

  「吉原の焼け跡はてえ、と―‐ってんですが、(首ったけ)」


かりゅうかい【花柳界】

 芸娼妓の社会。


かりょう【科料】

 刑法の規定する刑罰の一で、軽微な犯罪に科する財産刑。


かりょう【過料】

 過失の償いに支払わせる金品。科料と違い刑法上の刑罰ではない。あやまちりょう。


かるくち【軽口】⇒かるくちばなし


かるくちばなし【軽口噺】

 露の五郎兵衛の、辻噺のこと。


かわさき【川崎】

 奈川県北東部の一地区。六郷川を隔てて東京都に隣接。

 東海道の宿駅として栄え、京浜工業地帯、川崎大師などで知られる。


かわさきだいし【川崎大師】

 神奈川県川崎市大師町にある真言宗の寺。山号を金剛山、寺号を平間寺へいげんじ。大治年間創建。

 徳川家光が再興。厄除やくよけ大師として有名。


かわちょう【川長】⇒かわちょうろう

 川長楼の略称。  「―‐へ行って、おまんまでも食うつもりだが。(つるつる)」


かわちょうろう【川長楼】

 柳橋にあった料亭。文久二年(1862)六月十二日、薩長両藩士の会合が催された店。


かわや【厠】

 川をまたいで建てた川屋または家のそばに建てた側屋からと言われ、便所のこと。


かわらけ【土器】

 1)素焼きの陶器。土器投げの略。

 2)年頃になっても陰部に毛のない女性。また、その陰部。


かわらけなげ【土器投げ】

 高いところから土器を投げて、風に舞うさまを楽しむ遊び。京の愛宕山、江戸の飛鳥山などで行われた。

  「―‐の輪だよ。(愛宕山)」


かわりだい【変わり台】

 台の物のお代わり。  「―‐は何を入れる?(とんちき)」


がん【雁】

 ガンカモ科のうち、比較的大型の鳥の総称。総体的に首と足が長く雌雄同色。

 日本には秋飛来し春北へ帰る。かり。かりがね。  「―‐風呂と申しまする。(雁風呂)」


かんえいじ【寛永寺】

 東京都台東区上野にある天台宗の寺。山号は東叡山とうえいざん。徳川将軍家の菩提所。

 上野公園は寛永寺の境内跡。  「上野―‐殺生禁断の池。(唖の釣り)」


かんえいいちもんせん【寛永一文銭】

 寛永通宝の一文銭。寛永三年(1626)に日本で初めて鋳銭した銭貨。

 明治四年(1871)の新貨との交換比率は銅一文銭が一厘、鉄一文銭は十六枚で一厘と決められた。


かんえいしもんせん【寛永四文銭】

 寛永通宝の四文銭。元文四年(1739)より鋳造開始。裏に波模様があるところから、波銭ともいう。

 明治四年(1871)の新貨との交換比率は額面ではなく、素材質量で決めたため、銅四文銭が二厘。

 鉄四文銭にいたっては八枚で一厘とされ、寛永一文銭銅銭と比較し、極端な目減りとなった。


かんえいつうほう【寛永通宝】

 江戸時代の代表的銭貨。表に「寛永通宝」の四字を記した銭。寛永三年(1626)より寛永一文銭の鋳銭が始まる。

 元文四年(1739)以降は、寛永四文銭も発行。銅銭・真鍮しんちゅう銭・鉄銭がある。


かんがえおち【考え落ち】

 落ちの分類の一。考えなければわかりにくい落ち。


かんぎてん【歓喜天】

 商売繁盛の神。頭が象で体は人間の形像。単身像と、妃を伴う男女双身像がある。聖天さまとして知られる。


かんこうば【勧工場】

 明治・大正時代、多くの商店が組合制度を設けて、一つの建物内に種々の商品を陳列して販売した所。

 百貨店の発達により衰えた。勧商場。


かんしゃく【癇癪】 一行あらすじへ

 神経過敏で怒りやすい性質。また、怒り出すこと。  「花魁が―‐を起こして、(居残り佐平次)」


かんぜおん【観世音】

 妙法蓮華経などで説かれる菩薩。阿弥陀如来の脇にひかえ、人々を煩悩から救うという菩薩。

  「金竜山浅草寺に安置し奉る聖―‐菩薩しょうかんぜおんぼさつ。(やかん)」


かんだ【神田】

 東京都千代田区の一地区。もと東京市神田区。神田明神がある地。


かんだがわ【神田川】

 井の頭池から隅田川に注ぐ川。江戸初期に河川改修がなされ、江戸の上水として飲料に供していた。神田上水。


かんだじょうすい【神田上水】

 江戸初期に設けられた江戸最初の上水。井の頭池からの水を江戸の上水として飲料に供していた。神田川。


かんだばし【神田橋】

 日本橋川に架かる橋の一。大手町と神田を結ぶ。


かんだまつり【神田祭】

 東京神田明神の祭礼。九月十五日(現在は五月十五日)。


かんだみょうじん【神田明神】

 東京都千代田区外神田にある神社。天平二年(730)国豊島郡芝崎(現千代田区大手町)に創建。

 江戸が幕政の地となり城下の造成がなされ、元和二年(1616)現在の神田に移され神田明神と呼ばれる。

 祭礼、神田祭が九月十五日(現在は五月十五日)に行われる。


かんていりゅう【勘亭流】

 歌舞伎の看板などを書くのに用いる肉太で丸みを帯た書風。

 書道家岡崎屋勘六が、江戸中村座の絵看板に書いた文字が評判となり、俳号の勘亭から付いた呼称。


かんどう【勘当】

 公儀の勘当帳に記載し、素行の悪い子供や目下の親族、奉公人などの縁を断絶し追放すること。

 久離を切ること。役所に届けないものは内証勘当。  「―‐?結構ですね。(唐茄子屋)」


かんどうちょう【勘当帳】

 江戸時代、久離の届出を記録しておいた奉行所の帳簿。久離帳。


がんにんぼうず【願人坊主】

 依頼人に代って願かけの修行や水垢離みずごりなどをした乞食僧。  「西念という―‐。(藁人形)」


かんのん【観音】⇒かんぜおん

  「それを言うなら―‐様だ。(やかん)」


がんぶろ【雁風呂】 一行あらすじへ

 浜辺に落ちている木を薪として風呂の湯をわかすこと。青森県外ヶ浜の風習と伝えられる。

 雁が海上で体を休めるためにくわえてきた木を秋に浜へ落とし、春にはまたくわえて帰るといわれる。

 残った木は日本で死んだ雁のものとし、それを集めて供養のために風呂をわかし、諸人に振る舞ったとの伝え。


かんもん【貫文】

 金銭の単位で、江戸時代の一貫は千文に換算。  「五―‐というご褒美を下されたものだ。(二十四孝)」


がんりゅうじま【巌流島】 一行あらすじへ

 山口県下関市の関門海峡にある船島の通称。面積約0.1平方キロメートルの平坦な無人島。

 慶長十七年(1612)宮本武蔵と佐々木巌流の決闘地として知られ、敗れた巌流の名が付いたと伝わる。

 因みに落語の演題にある巌流島は無手勝流の謂われを踏まえたもので、舞台は隅田川の御厩の渡し。


かんれき【還暦】

 生まれた干支にもう一度還るの意。数え年の六十一才。




き 【豆知識の目次へ】 【か行の最上段へ】


き【柝】

 拍子木のこと。「―‐が入る」


き【葱】

 ネギの古称。一文字。ねぶか。「浅―‐あさぎ」「―‐苗きなえ」


ぎおん【祇園】

 1)京都八坂神社の旧称。また、その付近の地名。京都の遊里の一。

 2)祇園会の略。


ぎおんえ【祇園会】 一行あらすじへ

 京都八坂神社の例祭。六月七日~十四日、(現在は七月十七日~二十四日)。祇園御霊会。祇園祭。


ぎおんまつり【祇園祭】 一行あらすじへ ⇒ぎおんえ。


きかく【其角】 ⇒たからいきかく。

  「―‐の発句でございましょう。(牛ほめ)」


きぐすりや【生薬屋】

 漢方薬を売る店。  「あれは―‐の看板だよ。(心眼)」


きぐち【木口】

 建築用材木の種類、等級。  「―‐だけでも見ておきたいというものですから。(子別れ)」


きざえもん【喜左衛門】

 駕籠屋の符丁で空腹のこと。


きしぼじん【鬼子母神】⇒きしもじん


きしもじん【鬼子母神】

 法華経を受持する者の守護神とされる。子供を奪って食す夜叉であったが、仏が彼女の末子を隠して戒め、

以後は悔い改め、子宝・安産・子育ての神になったとされる。きしぼじん。


きしゃ【騎射】

 馬上から弓矢を射る武術。


きしゃがさ【騎射笠】

 騎射に用いる笠。網代の反り笠に、漆を塗って仕上げる。  「被っているのは―‐、(道灌)」


きしょう【起請】

 神仏に誓い、自分の行為・言説に偽りのない旨を記すこと。また、その文書。

 江戸時代の遊郭で、遊女が客との夫婦の契りをしたためた書状。起請文。

  「ちゃんと―‐を貰ってるんですから。(三枚起請)」


きそ【木曾】

 長野県の南西部の地名。中山道が通じ、ヒノキなどの良材の産地として知られる。


ぎぞく【義賊】

 富む者から盗み出した金品を貧しい者たちに与える盗賊。


きそよしなか【木曾義仲】

 源義仲の異称。木曾山中で育てられところから付いた名前。

    「粟津の一戦に―‐を滅ぼした源義経公。(源平)」


きたじゅっけんがわ【北十間川】

 東京都墨田区を東西に横断し、旧中川と隅田川を結ぶ一級河川。


ぎだゆう【義太夫】

 1)竹本義太夫。

 2)義太夫節の略。  「あれで―‐さえ語らなきゃいい人なんだが。(寝床)」

 3)浄瑠璃の異名。


ぎだゆうかたり【義太夫語り】 一行あらすじへ

 義太夫節を語ることを業とする人。  「田舎回りの娘―‐だそうで。(転宅)」


ぎだゆうぶし【義太夫節】

 浄瑠璃の代表的なもの。

 大坂の竹本義太夫が人形浄瑠璃として創始。近松門左衛門などの協力で元禄の頃から大流行。ぎだ。


きっきょう【吃驚・喫驚】

 驚くこと。


きつねけん【狐拳】

 拳の一。手を耳に当て狐、膝の上に当て庄屋、鉄砲を構えた形で猟師を表す。

 狐は庄屋に、庄屋は猟師に、猟師は狐にそれぞれ勝つという遊技。藤八拳。


きど【木戸】

 柵戸きどの意。木でできた開き戸。

 1)江戸時代、保安、取り締まりの目的で、町の堺に建てた門。

 2)庭や路地に設けた屋根のない開き戸。  「これ幸いと―‐を明けて出ると、(品川心中)」

 3)演芸場などの出入り口。もぎり。

 4)木戸銭の略。


きどせん【木戸銭】

 演芸場などの入場料。


きぬぎぬ【衣衣・後朝】

 1)男女が着物を重ねて共寝した翌朝、身支度のため着物を身につけること。また、その朝。

 2)夫婦が別れること。離縁。


きぬぎぬのわかれ【後朝の別れ】

 男女が一夜を共に翌朝の別れ。後朝。  「―‐翌日は江戸を出発というので、(盃の殿様)」


きのえね【甲子】

 干支の第一番目で、十干の「きのえ」と十二支の「ね」に当る年、または日。


きのえねまつり【甲子祭り】 一行あらすじへ

 甲子の夜、大黒天を祀ること。


きのつらゆき【紀貫之】

 平安の歌人・歌学者。醍醐・朱雀天皇に仕え、古今集を撰進。(868~945)

 「土佐日記」「新撰和歌」などを著す。

 百人一首に「ひとはいさ心もしらずふるさとは 花ぞむかしのかににほひける」


きのないし【紀内侍】

 紀貫之の娘。鶯宿梅の故事で知られる。


ぎぼし【擬宝珠】 一行あらすじへ

 欄干の柱の上などに付ける、ネギの花の形をした飾り。


きもいり【肝煎】

 1)奉公人や遊女などを周旋すること。またその人。

 2)名主・庄屋の異称。


きもいりやど【肝煎宿】

 奉公人などの身元を引き受けて奉公先を周旋する家。口入れ屋。請宿。


ぎゅう【妓夫】

 1)遊女屋の客引きをする男。妓夫太郎。  「この若い衆を―‐と言いますな。(お直し)」

 2)夜鷹の客引きや護衛などをする男。


ギヤマン

 1)ダイヤモンド。金剛石。オランダ語の転訛で江戸時代の古称。

 2)ガラスの古称。ダイヤモンドでガラスを切削していたところから、古くはガラス細工をギヤマン細工と呼ぶ。

   やがてガラスをもいうになった。  「―‐でこしらえてあるのだ。(水中の玉)」


ぎゅうたろう【妓夫太郎】⇒ぎゅう

  「なんだ、―‐か。(お直し)」


きゅうり【久離】

 江戸時代、欠落かけおちしたり、身持ちが悪いため別居した子弟に対し、目上の者が親族関係を絶つこと。

 連帯責任から免れるため、断絶したことを公儀に届け出る。勘当。


きゅうりちょう【久離帳】

 江戸時代、久離の届出を記録しておいた奉行所の帳簿。勘当帳。


きゅうりをきる【久離を切る】

 久離の届け出をして、親子や親族の関係を断絶すること。勘当。


きょうか【狂歌】

 滑稽、諧謔を盛り込んだ短歌。特に江戸初期および中期天明の頃に流行した。

  「―‐明日かてえくらいのもんで。(お直し)」


きょうかい【協会】

 芸人で組織する法人。

 落語協会。落語芸術協会。上方落語協会。


きょうげん【狂言】

 1)道理にかなわない言葉。

 2)戯言。

 3)猿楽から発した能狂言・歌舞伎狂言・壬生狂言などの総称。芝居。

 4)作り話。人をだます行為。


きょうこうきんげん【恐惶謹言】

 恐れかしこみ、謹んで申し上げますの意。 候文の手紙の最後に敬意を表して書く挨拶。

  「朝餉あさげの膳に付きたもうべし、―‐。(垂乳根)」


きょうしゃ【驕奢】

 権勢におごった贅沢な振る舞い。  「私は―‐に耽り、(雁風呂)」


きょうとしょしだい【京都所司代】

 京都に在住し、朝廷・公家に関する仕事を司ることを幕府から任命された職名。

 京都・伏見・奈良の町奉行を監督し、近畿の訴訟および社寺を管轄する。

  「奈良では―‐が裁いたのですが、(鹿政談)」


ぎょくだい【玉代】

 遊女や芸妓を揚げるための料金。玉。花代。  「―‐だって一両じゃおさまらねえ。(居残り佐平次)」


ぎょけい【御慶】 一行あらすじへ

 おめでたいこと。お慶び。お祝い。特に新年を祝う挨拶の言葉。「―‐帳」


ぎょけいちょう【御慶帳】

  年賀客の記名に備える帳面。  「おれが―‐をつけよう。(かつぎや)」


きよみずかんのん【清水観音】

 寛永八年天海僧正が、京都の清水寺に似せて上野寛永寺に建立した観音堂。本尊は千手観音。

 そばに再建された黒門が、旧寛永寺の山門跡。


きよみずでら【清水寺】

 京都市東山区にある北法相宗の寺。山号を音羽山。本尊は十一面観音立像。

 本堂の前方の懸崖に臨んで舞台を架し、眺望に富む。


きよもと【清元】

 清元節の略。  「こちらは―‐のお師匠さんでございましょうか?(山崎屋)」


きよもとぶし【清元節】

 浄瑠璃の流派の一。常磐津節からの分流で、富本節から独立した清元延寿太夫きよもとえんじゅだゆうが創始。

 歌舞伎、舞踊などの音楽に用いられる。


きらこうずけのすけ【吉良上野介】

 吉良義央の通称。


きらず【切らず・雪花菜】

 切らずに料理できるの意から、主に上方で豆腐を絞ったかすをいう。おから。うのはな。

  「桶の―‐を食らっているんで、(鹿政談)」


きらよしなか【吉良義央】

 江戸幕府の高家。通称、上野介こうずけのすけ。(1641~1702)

 元禄十四年(1701)三月十四日浅野長矩ながのりをはずかしめ、殿中松の廊下で長矩に傷を負わされる。

 元禄十五年(1702)十二月十四日、大石良雄を頭領とする赤穂浪士に討たれる。


きり【喜利】⇒おおぎり


きりとおし【切通し】

 山などを切り開いて通した道路。  「芝の―‐であったね。(ちきり伊勢屋)」


きりもち【切餅】

 1)のし餅を食べやすいように方形に切ったもの。

 2)形が(1)に似ているところから、一分銀百枚、すなわち二十五両を方形に紙で包み封をしたもの。


きりゅう【桐生】

 群馬県南東部の市。桐生織りで知られる。  「―‐へ向かう茂兵衛が、(おさん茂兵衛)」


ぎろう【妓楼】

 遊女屋。女郎屋。  「すぐ―‐へあがって、(明烏)」


きん【金】

 1)銭に対し、大判、小判、一分金などをいう。

 2)寄席の楽屋符丁で客のこと。「甘―‐」「どさ―‐」「せこ―‐」


きんえんらくご【禁演落語】

 昭和十六年(1941)に、太平洋戦争の時局では相応しくないと、口演が禁じられた落語五十三題の総称。

 これらの禁演落語は、東京都台東区寿にある本法寺に咄塚を建立して葬られた。

 終戦後の昭和二十一年(1946)に復活祭が行われ、六年ぶりに陽の目を見ることとなった。


きんだち【公達】

 王。また、王家の一族。貴族の子息。  「平家の―‐はゆかしきことよ。(源平)」


きんめいちく【錦明竹・金明竹】 一行あらすじへ

 マダケの栽培品種で、孟宗錦明竹・真竹錦明竹。いずれも中国からの渡来で、黄金色の稈かんに緑の縞が入る。

  「自在は黄檗山―‐。(錦明竹)」


きんらん【金襴】 

 金糸や銀糸を緯糸よこいとに織り込み、それを主調に文様を表した織物の総称。

 古くは中国から輸入したが、天正年間に技が伝わり、のちに京都西陣の産が中国産を圧倒するに至る。


きんりゅうざん【金竜山】 

 浅草寺の山号。  「―‐浅草寺に安置し奉る聖観世音菩薩しょうかんぜおんぼさつ。(やかん)」



く 【豆知識の目次へ】 【か行の最上段へ】


くいつき【食いつき】

 寄席の出番で、仲入りが終わって最初に上がる演者をいう楽屋符丁。

 客が仲入りに売店で買った菓子などになどに食いついているとの意。


くおんじ【久遠寺】

 山梨県南巨摩こま郡身延町にある日蓮宗の総本山で、山号は身延山。

 日蓮が結んだ庵跡地にあった日蓮の廟所を寺院とした。


くぎぬき【釘抜き】

1)打ち込んだ釘を、テコの原理を利用し抜く道具。現在はL型をしたバールと称する物が多く用いられる。

  古くは型の支点で交差する柄を握って先端で釘を挟み、外の丸みをテコにして抜いた。

   「―‐を懐から取り出し、(粗忽の使者)」

  また、後で抜きやすいように釘を差し込んで打った◇型の、釘抜き座金の略。

2)家紋の一。型の釘抜きや、◇型の、釘抜き座金を型どったもの。釘抜きと、九城抜きを掛けたという。


くさなぎのつるぎ【草薙剣】

 三種の神器の一。熱田神宮の身体として祀るられている剣。平家滅亡の時、海に投じられたとも伝わる。

 素戔嗚尊すさのうのみことが八岐大蛇やまたのおろちを退治した時、その尾から剣が出たという日本神話に基づく。

 日本武尊やまとたけるのみことが、焼津で敵の放った野火の草を、これで薙ぎ払って消したからとも、クサは臭、

ナギは蛇の意とも伝わる。天叢雲剣。


くじらじゃく【鯨尺】

物差しの一。もと、鯨のひげで作ったことによる称。もっぱら布を計るのに用いられた。

鯨尺の一尺は曲尺かねじゃくの一尺二寸五分で、約37.9センチメートル。


くすぐり【擽り】

 落語本来の筋にある笑いではなく、演者が入れ込んだ笑い。


くちあい【口合い】⇒じぐち


くちいれ【口入れ】

 奉公人などの世話をすること。周旋。仲介。仲人。口添え。


くちいれや【口入れ屋】 一行あらすじへ

 口入れを業とする家、また、その人。口入れ宿。桂庵。

  「たいへんに―‐さんがあるそうでございます。(こうふい)」   


くって【繰って】⇒くる

  「馴染み帳を―‐いくと、(品川心中)」


くびったけ【首っ丈・頸っ丈】 一行あらすじへ

 異性に惹かれて、夢中になっていること。  「この通り、―‐だよ。(首ったけ)」


くぼう【公方】

 征夷大将軍。幕府の主宰者。


くまさかちょうはん【熊坂長範】 一行あらすじへ

  牛若丸に討たれたという義経伝説上の盗賊。転じて、大泥棒の意。


くらま【鞍馬】

 京都市左京区にある一地区。標高570メートルの鞍馬山があり、鞍馬寺は牛若丸が七才で預けられた寺。

  「―‐より牛若丸がいでまして、その名を九郎判官くろうほうがん。(青菜)」


くらまえ【蔵前】

 東京都台東区の隅田川西岸の一地区。

 昭和九年(1834)までは、浅草御蔵前片町の通称。  「―‐が物騒でございまして、(蔵前駕籠)」

 昭和三十九年(1864)の住居表示制度以降、厩橋から蔵前橋と総武線鉄橋のほぼ中程までの区域。


くらまえばし【蔵前橋】

 東京都台東区と墨田区間の隅田川に架かる橋の一。蔵前に由来する名称。


くらわんかぶね【食らわんか船】

 淀川で三十石船などの客に、「酒くらわんか、餅くらわんか」と言う売り声で酒などを売る茶船。


くりげ【栗毛】

 たてがみと尾が赤褐色で、地色の赤黒色を呈する馬の毛色。


くる【繰る】

 順にページをめくること。


くるま【車】

 1)車輪。

 2)車輪の回転を利用して人や荷などを運ぶものの総称。人力車・荷車・牛車など。現在は多くの場合自動車を指す。

  落語では、人力車を指すことが多い。  「―‐に乗ってガラガラガラ……(成田小僧)」


くるまや【車屋】

 1)車の製造・販売・修理を業とする人。また、その家。 

 2)車を引くことを生業とする人。車引き。とくに車夫をいう。  「なんだ、おめえ―‐か?(替わり目)」

 3)車を用意して、利用者を待つ家。     


くるわ【郭】

 遊女屋を集め周囲を囲った区域。遊郭。遊里。傾城町。

  「どういう間柄でも―‐の規則でございますので。(お見立て)」


くるわことば【郭詞】

 遊郭で遊女が使う言葉。出身地の言葉を隠す為に作られた。ありんす言葉。里言葉。


くるわばなし【郭噺】

 郭が舞台になっている落語。


くろうほうがん【九郎判官】

 源義経。義経が検非違使に任命されたことからいう。はんがんともいう。九郎は九男の意。

  「鞍馬より牛若丸がいでまして、その名を―‐。(青菜)」


くろき【黒木】

 1)皮つきの材木。⇔あかぎ

 2)一尺程度の長さに切った木を竈で蒸し、黒くしたもの。薪として使用。「―‐売」


くろきうり【黒木売】

 黒木を頭にのせて売り歩く京都大原の女。大原女。


くわな【桑名】

 三重県北東部の市。桑名船の乗船場。東海道の宿場町、松平氏十万石の城下町として繁栄。

 焼蛤やきはまぐりで有名。  「尾張の熱田から伊勢の―‐へ向かう海上七里の船旅。(桑名船)」


くわなぶね【桑名船】 一行あらすじへ

 東海道の熱田と桑名の海路七里を運行した船。



け 【豆知識の目次へ】 【か行の最上段へ】


けいあん【桂庵】

 縁談や奉公などの紹介者。江戸の医者大和慶庵がこれらの仲介をしたことによる呼称という。

 口入れ屋。請宿。  「―‐から新しい女中が来た。(引っ越しの夢)」


げいぎ【芸妓】

 酒宴に呼ばれ席を盛り上げる職業の女性。芸者。


けいきあんどん【景気行灯】

 主な演者の名前を書いて、寄席の入り口に掛けた屋根付きの行灯。招き行灯


けいこ【稽古】

 古(昔の物事)を稽(考え調べる)の意。特に武術・遊芸などを習うこと。


げいこ【芸子】

 芸者。芸妓。


けいこや【稽古屋】 一行あらすじへ 一行あらすじへ

 音曲・舞踊などを教える家。また、その人。


げいしゃ【芸者】

 歌や三味線、踊りなどで酒宴を盛り上げ、客を楽しませる職業の女性。芸妓。

  「―‐という紗は何月に着るんです?(百年目)」


げいしゃや【芸者屋】

 芸者を置いて酒宴をさせる店。置屋。  「この辺にゃあ―‐がないからな。(応挙の幽霊)」


げいしょうぎ【芸娼妓】

 芸妓と娼妓。芸者と遊女


けいせい【傾城】

 色香で城を傾けるの意。太夫、天神などの上級な遊女。

  「―‐をもとめんでもよい。ただ見に参るのじゃ。(盃の殿様)」


けいせいまち【傾城町】

 遊女屋を一定の場所にまとめ周囲を囲った区域。郭。遊郭。遊里。


げいにん【芸人】

 1)遊芸稼人の略。演芸を職業とする人。

 2)素人で芸の巧い人や、多芸な人。


げこ【下戸】⇔上戸

 酒が飲めない人。  「俺は―‐で酒が飲めねえし。(辰巳の辻占)」


けころ【蹴転】

 蹴転ばしの略。  「お前さん―‐ってのを知ってんのかい?(お直し)」


けころばし【蹴転ばし】

 江戸時代、浅草や下谷付近などにいた、玉代二百文の最下級の女郎。


げざ【下座】

 1)歌舞伎の下手にある伴奏者のいる場所。

 2)寄席囃子の三味線を演奏をする人。現在はお囃子さんと呼ぶ。


げさく【戯作】

 江戸時代中期以降江戸で流行した、娯楽主体の通俗文学。「―‐者」「―‐本」


げそ【下足】

 げそくの略。転じてイカの足。


げそく【下足】

 寄席や湯屋などで脱いだ履き物。


げそくふだ【下足札】

 下足番が、預かった履き物と交換に渡す札。げそふだ。

 また、いくつかに仕切られた下駄箱に付いた扉の錠前を、刻まれた溝の合致で開錠できる札。


げそくばん【下足番】

 寄席など大衆が集まる場所の入り口で履き物を預かる人。げそばん。


げそふだ【下足札】

 げそくふだの略。  「方々のうちで―‐を撒いたり。(居残り佐平次)」


げた【下駄】

 二枚の歯のある台木に三つの穴をあけ、鼻緒をすげた履き物。「駒―‐」「高―‐」「日和―‐」

 一つの材から台と歯をくり抜いた連歯と歯をすげる差歯とがあり、歯の数は一本歯や三枚歯もある。

  「一の字一の字一本歯の―‐の跡。(雑排)」   


けちみゃく【血脈】 一行あらすじへ

 1)けつみゃくに例え、仏の教えや戒律が、師から弟子へ代々伝えられこと。また、その系図。

 2)在家の者に、仏の教え教えや戒律が伝えられたとする略譜。おけちみゃく。

   「御―‐の御印文をいただいて、(お血脈)」


けっしょ【闕所】

 幕府に没収された領地。また、財産の一部あるいは全てを幕府が没収する刑罰。


けつみゃく【血脈】

 血のつながり。血統。血筋。家系。「―‐が絶える」


げてもの【下手物】

 1)並の品。高価で精巧な品に対し、日常用いる大衆的で質朴な雑器。

 2)一般から風変りと見られるもの。「―‐趣味」「―‐喰い」


けびいし【検非違使】

 京中の非法・非違を検察するため、平安初期から置かれた官職名。追捕・訴訟・行刑も行うようになる。

 現在の裁判官と警察官とを兼ね、権限は強大。後に、諸国や伊勢神宮・鹿島神宮などにも置かれた。


げめんじぼさつないしんにょやしゃ【外面似菩薩内心如夜叉】

 女性は、うわべは柔和で美しいが、心根は険悪で恐ろしいの意。外面如菩薩内心如夜叉とも。


げめんにょぼさつないしんにょやしゃ【外面如菩薩内心如夜叉】⇒げめんじぼさつないしんにょやしゃ

  「既に釈迦が、―‐、ああ恐るべし、(明烏)」


けん【拳】

 指の屈伸や手の開閉などに意味を持たせ、二人以上で勝負を競う遊技。本―‐。狐―‐。虫―‐。石―‐。


けんじょう【献上】

  1)身分の高い人に差し上げること。  「薩摩様に―‐した芋は・・・(位牌屋)」

  2)献上博多の略。  「茶―‐の帯を締めて、(茶金)」


けんじょうはかた【献上博多】

  福岡県博多で産出する、縞文様を織り出した帯地。黒田藩主が江戸幕府に献上したからの呼称。献上。


けんすい【建水】

 茶道具の一、茶碗をすすいだ水を捨てる器。水こぼし。


けんだい【見台】

 1)義太夫語りが本を置く台で、譜面代のような形をしたもの。

 2)上方落語の道具で釈台のような形をしたもの。


けんつく【剣突】

 激しく叱りつけること。厳しく小言を言うこと。けんのみ。  「道理で―‐を食いました。(成田小僧)」


げんのう【玄能】

 鑿のみなどを打つのに用いる大きめの鉄鎚かなづち。  「この―‐で頭をたたき割るから!(子別れ)」


けんのみ【剣鑿】

 荒々しく叱ること。荒い小言。けんつく。「―‐を食らう」


けんれいもんいん【建礼門院】

 平清盛と二位尼の次女で名を徳子。高倉天皇の皇后で安徳天皇の母。(1155~1213)

 寿永四年(1185)平家が壇ノ浦の戦いに破れ、安徳天皇と共に海に身を投じたが、

源氏に救われ徳子だけが生き残る。

 その後尼となって大原寂光院に住み、高倉・安徳両天皇および平家一門の冥福を祈る。



こ 【豆知識の目次へ】 【か行の最上段へ】


こあみちょう【小網町】

 東京都中央区の一地区名。日本橋川の茅場町対岸に位置する町。日本橋小網町。

  「―‐の半七です。(宮戸川)」


こうがい【笄】

 1)男女ともに髪をかきあげるのに用いる具。根元が平たく先端は細く、銀や象牙などでつくる。

 2)後世、女性の髪飾りの一。

 3)刀の鞘に挿しておき、冑かぶとを被った隙間から頭を掻くのに用いた。後に刀の装飾品となる。


ごうがい【号外】

 臨時に発刊し、号数に含まれない新聞・雑誌。特に、大事件などが発生したときに発行する新聞。


こうがんじ【高岩寺】

 東京都豊島区巣鴨にある曹洞宗の寺。山号は萬頂山ばんちょうざん。

 延命地蔵を本尊とし、とげぬき地蔵の名で知られる。


こうこ【香香】

 女房詞で漬け物。香の物の香を重ねた語で、こうこうがつまった言い方。

  「かくやの―‐なんて、乙なもんだ。(酢豆腐)」


こうこう【香香】

 香の物。こうこ。漬け物。


こうごう【香合・香盒】

 香を入れる蓋付きの小容器。漆器・陶器などがある。  「織部の―‐(錦明竹)」


こうざ【高座】

 1)落語や講談を演じる者が座するために設置した台。寄席では舞台そのものをいう。

   文化四年(1807)寺社奉行より幅六尺・奥行き三尺の台の設置を許されたが起源。

   落語会などでは舞台があってもその上に毛氈などを掛けた台を設置し、後方に屏風や後幕を配す。

 2)(1)で演じる演芸。また、その演技。


こうざがえし【高座返し】

 演者が高座を降り、次の演者が上がる間に座布団を返してめくりを次の演者の名前に替える前座の仕事。


こうし【格子】

 1)角材を縦横に組み合わせた建具。  「―‐造りの粋な家へ入った。(山崎屋)」

   また、それを図案化した模様。

 2)格子女郎の略。また、格子女郎が控えている場所。


こうしじょろう【格子女郎】

 元は遊郭の表通りに面した格子の中に控えていた遊女の意。

 狭義には遊女の格式で、江戸吉原では太夫に次ぐ地位、大坂新町では太夫のこと。)


こうじまち【麹町】

 東京都千代田区の一地区。もと東京市三十五区の一で、現在の千代田区から神田を除いた地域を称した。

  「嫌な奴ね、その―‐の猿。(厩火事)」


こうじまちのいど【麹町の井戸】

 麹町は高台にあり、井戸が深いところから、深いものにたとえた語。「あいつの欲は―‐だ。」


こうしゃく【講釈】

 1)文章や語句の意味を説明すること。講義。

 2)物事の道理や教義。またそれを説くこと。

 3)江戸時代、民衆に軍記物を講じたことに始まる寄席芸。明治以後は講談。

  「―‐をやってから死にとうございます。(桑名船)」


こうしゃくし【講釈師】

 講釈を演ずる芸人。

  「実は私、旅回りの―‐でございまして。(桑名船)」


こうじゅう【講中】

 1)神仏に詣でる目的で集まった連中。

 2)無尽講などの連中。


こうしゅうかいどう【甲州街道】

 五街道の一。江戸日本橋から内藤新宿へ出て、下諏訪に至る。


こうしょう【公娼】⇔私娼

 公に認められた売春婦。

 日本では鎌倉時代から昭和三十一年(1958)に売春防止法が実施されるまで続いた。娼妓。


こうじょう【口上】

 1)興行での出演者や会などの紹介を申し述べること。

 2)口頭で伝えること、また、その内容。  「で、使者の―‐は?(粗忽の使者)」

 3)口上書きの略。口頭で伝えることを文書にしたもの。  「あれは―‐って読むんです。(居酒屋)」


こうじょう【光乗】

 四代目後藤四郎兵衛。  「祐乗、宗乗、―‐三作の三所物。(錦明竹)」


こうじん【荒神】

 仏・法・僧の三宝を守る神、三宝荒神の略。火の神・竈の神として台所に祀る。

  「だれだい?え、―‐さまだね。(天狗裁き)」


こうじんだな【荒神棚】

 竈の上に荒神を祀るための棚。


こうじんばしら【荒神柱】

 竈の近くにある柱。荒神をこの柱に祀る。


こうせき【口跡】

 言い回し、声色、声柄など。


こうせん【口銭・貢銭】

 売買の手数料。  「一分で市で買って参りましたが―‐はいりません。(火焔太鼓)」


こうた【小唄】

 江戸末期に端唄から派生した三味線唄。清元関係者が余技に作曲したことも多く、粋で短い曲になった。

 三味線は撥ばちを使わず爪弾つまびきが本格。


こうだん【講談】

 釈台を前に置き、張り扇でこれを叩きながら、軍記や武勇伝、怪談などを語る芸。江戸時代は講釈。


ごうどぶし【神戸節】

 尾張熱田神戸の遊里で唄われた俗謡。潮来節が元になり、のちに都々逸節となる。


こうのいけ【鴻池】

 大坂の巨商。鴻池善右衛門当主の通称。山中鹿介が清酒醸造を興し江戸へも輸送。

 子、善右衛門正成ぜんえもんまさなりが醸造業のかたわら海陸運送業を始める。

 大名貸、両替商も行い、大坂随一の豪商となる。

 三代目が、宝永四年(1707)鴻池新田を開き、以後、両替商専門となった。

 明治三十年(1897)鴻池銀行、のちの三和銀行を設立。  「―‐善右衛門がこれを聞きまして、(茶金)」


こうのもの【香の物】

 野菜を塩・糠味噌ぬかみそなどに漬けた食品。こうこ。しんこ。漬け物。


こうのもろなお【高師直】

 仮名手本忠臣蔵の登場人物の一。塩谷判官を苦しめ刃傷を受ける。

 南北朝時代の武将、高師直の名を借り、江戸幕府の高家吉良義央に擬す。


こうばん【香盤】

 噺家の順位を決めたもの。また、それを記した書物。上方落語協会には無い。

 落語芸術協会の香盤はこちら。


こうふ【甲府】

 山梨県の県庁所在地。戦国時代、武田信玄が形成した城下町。江戸時代は幕府直轄の領地。


こうめ【小梅】

 江戸本所向島小梅村の略。

  「―‐の水戸さまへ、(文七元結)」


こうめばし【小梅橋】

 隅田川から小梅村の水戸藩下屋敷へ引いた掘り割りに架けられていた橋。


こうめむら【小梅村】

 現在の東京都墨田区にあった旧地名。旧区制で本所区向島、小梅瓦町・小梅業平・新小梅町などに統廃合。

 昭和二十二年。本所区と向島区の合併で小梅瓦町は向島二~三、小梅業平は業平・新小梅町は向島一。


こうや【紺屋】

 こんやが転化したもの。元来は藍染あいぞめ屋をいったが、のち染物屋をいう。

  「―‐の職人で久蔵(紺屋高尾)」


こうやく【膏薬】

 膏あぶらで練った薬。外用の塗り薬・貼り薬。  「俺の股に貼ってあった―‐が……(粗忽長屋)」


こうやさん【高野山】

 和歌山県北東部にある標高1000メートル前後の山並み。真言宗の総本山で金剛峯寺こんごうぶじの山号。


こうやのえいじろう【紺屋の栄二郎】

 ビラ字の祖。神田藁店に住む紺屋の職人栄二郎。本業のかたわら寄席のビラを書いていたが、

天保六~七年頃、提灯の文字と勘亭流とを合わせた肉太のビラ字を考案。


こうらい【高麗】

 朝鮮王朝の一。(918~1392)

 朝鮮の異称。「―‐人参」「―‐焼」  「これが―‐の梅鉢.。(猫の茶碗)」


こうらいぢゃわん【高麗茶碗】

 とくに高麗以後、朝鮮で造られた高麗焼の茶碗。


こうらいやき【高麗焼】

 朝鮮から渡来した古陶磁器の総称。高麗茶碗。


こうり【行李】

 竹などで編んだ入れ物。旅人が荷物を入れるためのものや、衣類などを入れて押入に置いたりするもの。

 柳で編んだ物を柳行李と呼ぶ。


ごえもん【五右衛門】⇒いしかわごえもん。


ごえもんぶろ【五右衛門風呂】

 下から火を炊き、水面に浮いた底板を踏んで入浴する風呂。


ごかい【五戒】

 仏に仕える者が守るべき五つの戒いましめ。  「ご出家はそれができません。―‐を保つってんで。(鈴ふり)」

 殺生戒せっしょうかい・偸盗戒ちゅうとうかい・邪淫戒じゃいんかい・妄語戒もうごかい・飲酒戒おんじゅかい。


ごかいかいどう【五街道】

 江戸時代、江戸日本橋を起点とした五つの街道。東海道・中山道・日光街道・甲州街道・奥州街道の称。


ごぎょう【五行】

 中国の哲理で万物の元になる気といわれる、木・火・土・金・水の総称。男女の相性占いに用いたりする。

 兄弟と組み合わせて、十干とする。


こくら【小倉】

 1)福岡県北九州市の一地区。小笠原藩十五万石の城下町。

 2)小倉織の略。  「唐桟の着物に―‐の帯(巌流島)」


こくらおり【小倉織】

 小倉地方産出の綿織物。経糸たていとを密にし、緯糸よこいとを太くして織る。

 帯地や袴地にするほか、学生服地にもする。


ござ【後座】

 講談で後に出る者。真打。前講、中座、後座の順に出演する。  「―‐が伊達の評定録。(桑名船)」


ござ【茣蓙】

 藺草いぐさの茎で作ったむしろに縁へりをつけた敷物。


こさつ【古刹】

 由緒ある寺。


ござふね【御座舟】

 1)貴人が乗る船。  「―‐が出て来て舳みよしへ竿を立てて扇面を開き。(源平)」

 2)屋形船。  「備前から―‐に乗ったんだそうでございます。(錦明竹)」


こし【輿】

 屋形を造り、その下に通した二本の長柄を担ぐなどして人を運ぶ乗り物。「玉の―‐」「神―‐」「―‐入れ」


こしいた【腰板】

 1)男物の袴はかまの腰部分に当ててある板。

 2)壁や明障子などの下部に張った板。


こしいれ【輿入れ】

 嫁を乗せた輿を嫁ぎ先へかつぎ入れること。嫁入り。婚礼。


ごじいんがはら【護持院原】

 東京都千代田区神田橋の外にあった護持院の跡地。

 享保二年(1717)に焼失し寺地を火除地とした原。明治元年(1868)に廃止。


こしかけぢゃや【腰掛茶屋】⇒かけぢゃや


ごしきふどう【五色不動】⇒えどごしきふどう


こししょうじ【腰障子】

 腰板の高さが一尺から一尺五寸程度の明障子。

  「―‐に丸に八の字、丸八と言やあすぐわかるから。(野晒し)」


こしだかしょうじ【腰高障子】

 腰板の高さが一尺五寸以上ある明障子。


こしゅ【戸主】

 戸主権を持ち、一家を統括する者。家の主人。やぬし。  「あなた、―‐でしょうな。(代書屋)」


こしゅけん【戸主権】

 旧民法で、家長としての支配権。


こしょう【小姓】

 1)貴人の家や寺などで、主人の身の回りの雑用を務める者。

 2)主君の側近く仕えて雑用をつかさどる武士。


ごじょうおおはし【五条大橋】

 京都市五条通りの鴨川に架かる橋。牛若丸と弁慶の伝説で知られる。


こしょうきちざ【小姓吉三】

 浄瑠璃八百屋お七で、お七が情を通じた小姓の小野川吉三郎。寺小姓生田庄之助に擬す。


ごせっく【五節句】

 年に五度ある節句の総称。


こぞう【小僧】

 1)年少の僧。子供の僧。小坊主。

 2)商家に奉公する少年。丁稚。  「口の軽い―‐さんでいらっしゃること。(成田小僧)」

 3)年少の男子を見下げて言う語。

 4)遊里で、一人前でない遊女をさす語。


こそで【小袖】

 1)もともとは筒袖の下着。やがて袂たもとが付けられ内着や上着として用られるようになった。

 2)絹の綿入れ。


こつ【小塚】

 千住の小塚原の通称。また千住にあった岡場所の称。千住の字を当てたりする。

  「吉原じゃできないから、ごまかして―‐へ行く。(お直し)」


こづか【小柄】

 脇差の鞘に挿す小刀こがたな。  「―‐付きの脇差。(錦明竹)」


こづかっぱら【小塚原】

 江戸時代千住にあった死刑執行場。古塚原。骨ヶ原。こつ。

  「―‐というのは、昔お仕置き場がありました跡へ、(お直し)」


こっけい【滑稽】

 面白おかしいこと。また、そのさま。馬鹿馬鹿しい、くだらないと感じさせる言動。


ごとうしろべえ【後藤四郎兵衛】

 室町中期の金工。後藤祐乗を開祖とする後藤本家当代の通り名。

 初代祐乗、二代宗乗、三代乗真、四代光乗、五代徳乗と、江戸幕末の十七代典乗まで続いた。


ごとうぼり【後藤彫】

 金工後藤四郎兵衛一門の作品。


こばなし【小噺】

 落語のマクラに用いる落ちの付いた短い噺。


こばん【小判】⇔おおばん

 江戸時代に造られた楕円形の一両通用貨幣。


ごひいき【御贔屓】⇒ひいき


こびょうし【小拍子】

 上方落語で演出に用いる長さ9センチメートル程度の拍子木。左手に持ち見台を叩く小道具。


ごふ【護符】

  神仏の加護により厄難から逃れさせるというお守り。

  紙や木札などに呪文や神仏の名、あるいは像などを書いたものを身につけたり、壁に貼りつけたりしておく。

  また食べたり飲んだりする類のものもいう。  「毒消しの―‐がありますから、(鰍沢)」


ごふく【呉服】

  呉服物の略。「―‐呉服尺」「―‐呉服屋」


ごふくじゃく【呉服尺】

  江戸時代まで裁縫に用いた物指しで、明治時代には廃止となった。

  呉服尺の一尺は、曲尺の一尺二寸に相当し、約36.4センチメートル。


ごふくもの【呉服物】

  織物。反物。太物に対し、絹織物。


ごふくや【呉服屋】

  呉服物を売る店。また、その人。  「日本橋通一丁目の、白木屋という―‐。(出世の鼻)」


ごぶべり【五分縁】

  五分幅の畳縁を、五分間隔で糸を通して仕上げた畳。また、その畳縁。

   「畳は備後の―‐でございます。(牛褒め)」


ごふん【胡粉】

  日本画に用いる白色の顔料。白粉おしろいの原料にもしたが、現在は人体に有害なため使用されない。

  奈良時代から鎌倉時代までは鉛白と呼ばれる、鉛を酢と塩で酸化蒸発させた板状結晶の粉を用いた。

  日本は湿度が高く変色しやすい、鉛は高価などの理由から、室町時代以後、焼いた貝殻の粉末を使用。


ごへい【御幣】

  幣束の尊敬語。  「―‐を担ぐ人があります。(かつぎや)」


ごへいかつぎ【御幣担ぎ】

  御幣を担いでお払いをするところから、縁起や、つまらぬ迷信を気にすること。また、その人。担ぎ屋。


こべり【舷】

  船縁。船端。  「そのお武家様が―‐でポンとやると、(巌流島)」


こぼりえんしゅう【小堀遠州】

 小堀遠江守とおとうみのかみ政一。近江国の人。江戸時代の茶道家・華道家として著名。

 遠江守であることから遠州と称。号を宗甫。遠州宗甫。(1579~1647)

 茶道は古田織部に学び、遠州流を創始、徳川家光の師範。


こまい【木舞・小舞】

 壁や屋根の下地を組むための竹または木。「―‐掻」


こまいかき【木舞掻】

 木舞で壁の下地のを組むこと。また、その職人。  「―‐の野郎と俺と三人で、(お直し)」


こまがた【駒形】

 駒形堂付近の一地区名。現在の台東区駒形一・二丁目。「―‐橋」

  「うちが、なんでございます、―‐なんで。(なめる)」   


こまがたどう【駒形堂】

 駒形の地名の由来となる堂。馬頭観音を本尊に祀る堂で駒形橋の右岸上流側に立つ。

 浅草寺の本尊である観音像が引き上げられた場所と伝わる。現在の堂は昭和八年(1933)に再建されたもの。


こまがたばし【駒形橋】

 隅田川の駒形に架かる橋。昭和二年(1927)駒形の渡し場に架橋。


こまげた【駒下駄】

 台も歯も一つの材木をくり抜いてつくった下駄。


こまち【小町】

 小野小町。

 小町娘の略。


こまちむすめ【小町娘】

 小野小町の様に美人な娘。美人と評判の高い娘。小町。


こまどめいし【駒留石】

 馬をつなぎ止めるための石。


こまものや【小間物屋】

 紅、白粉の化粧品や髪飾り、楊子、小刀など、日用の細々したものを商う店。また、その人。

 江戸時代は、荷を背負っての行商が普通だった。


こみせ【小見世・小店】

 1)遊郭で格式の低い妓楼。  「―‐てえやつはこせついていけねえから、(居残り佐平次)」

 2)小さな店。


こむろ【小室】

 山梨県 南巨摩郡増穂町の一地区。  「―‐から戴いてきた毒消しの護符。(鰍沢)」


こや【小屋】

 掛け小屋の意で、興行を打つ劇場やホールのこと。入れ物。箱。


ごや【後夜】

  六時の一。寅の刻。現在の午前四時頃。夜半から朝にかけての称。


ごりん【五厘】

 寄席の事務員。手数料が五厘だったことからの称。


ごろ【語呂】

 1)言葉の調子や続き具合。

 2)語呂合わせの略。


ごろあわせ【語呂合わせ】

 似通った語音の調子などを楽しむ言葉遊び。地口。


こわいろ【声色】

 言葉の調子や口調。また、それを真似ること 声色遣いの略。  「おれの―‐うまいんだってね。(干物箱)」


こわたり【古渡り】

 室町時代以前に外国から伝来した品の総称。  「―‐唐桟の対服で、(茶金)」


こわいろつかい【声色遣い】

 役者や有名人の声色を真似る芸。またその芸人。声帯模写。こわいろ。


こわめし【強飯】 一行あらすじへ

 餅米を蒸したもの。おこわ。赤飯。白蒸かし。

 一般に、祝賀には小豆を加え、仏事には豆を加えない白いものや黒豆を混ぜたものを用いる。


ごんさい【権妻】

 正妻でない妻を意味する明治初期の語で、正妻の他に養い愛する女。めかけ。てかけ。側室。

  「旦那を送り出した―‐は、(転宅)」


ごんすけ【権助】

 飯たき男。下男。しもべ。


ごんぱち【権八】

 芝居の白井権八が、幡随院長兵衛ばんずいいんちょうべえの家に居候していたところから、転じて居候のこと。


こんぽんちゅうどう【根本中堂】

 比叡山延暦寺の中心になる建物。延暦七年(788)最澄さいちょうが創建した薬師堂。

 一乗止観院いちじょうしかんいん。


こんや【紺屋】

 元来は藍染あいぞめ屋をいったが、のちには広く染物屋をいう。こうや。

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