FE3H考据·一
ザラスの禁呪 the Forbidden Spell of Zahras
白雲の章・女神の行方において、封じられた森でクロニエたちと戦ったベレトスは森の奥へと誘い込まれ、そこに現れたソロンにより闇の空間に囚われてしまいました。その際に発動されたのがザラスの禁呪、英語ではthe Forbidden Spell of Zahras(禁じられたザラスの呪文)です。この闇は呑まれた人間を未来永劫闇の中に閉じ込め、女神でもなければ現世に戻ることはできなくなる術であり、ある意味空間転移に近い術であると考えられます。ただし禁じられた呪文と言われるように後述のような何らかの生贄が必要とされ、簡単に使えるような術ではないと考えられます。また発動後にエーデルガルトとディミトリの言及にあるように、何らかの魔導に基づく力である可能性が高いと考えられます(紅花最終章のレアの咆哮に対するリンハルトの反応などを見るに魔導の気配は感知できるもののようです)。これに関連して闇に蠢くものたち陣営が頻繁に使う転移魔法ですが、本編で登場するワープ・レスキューはともに白魔法にあたり、彼らの使う魔導とは別物であると考えられます(そうでなかったら本編で使わせてください、ヒューベルトはなぜ同陣営になるとメテオも置いてきてしまうんですか涙)。実際に転移する際に現れる光の色は闇魔法と同じピンクがかった色をしており、何らかの闇魔法によるものではないかと考えられます。ヒューベルト自身ワープ・レスキューを使えませんので、より限られた能力(例えば特定の場所にしか移動できないような能力)かもしれません。またこのワープを見せた人物と同時に移動した人物(炎帝、死神騎士、トマシュ、ソロン、クロニエなど)が全員闇に蠢くものか闇魔法を使える人物であることから、闇魔法との親和性もその転移能力と関係しているかもしれません。
禁呪が発動されると、封じられた森の祭壇の四隅から紫色の魔導の力が溢れ出します。クロニエがわざわざ封じられた森にベレトスを誘いこんだことから、この場所自体も儀式に必要なものであった可能性があります。特に封じられた森はゴーレムの残骸や崖下に炎の紋章が存在し、ずっと以前に女神の眷属たちとの戦いの際にこの場所で同様の術が使われたのかもしれません。
発動前ムービー:崖下広場の中心に円のような模様も描かれており、古の魔法陣のようなものの可能性あり。この広場の奥の崖には炎の紋章あり。発動中:紫のもやが先生の体にまとわりつき、動きを封じます。マイクランが魔獣化したときの状況にも似ていますが、あのときのようになんらかの実体が伴ったものではないように見えます。紫のもやに完全に包まれ、ベレトスは忽然と姿を消します。広場のさらに奥、ソロン周囲の四隅に炎が点灯します。こちらは崖の上。次に発動のためのプロセスでは、まずソロンがクロニエの体内に腕を突っ込み、そこから取り出された人工紋章石のようなものを掲げ粉々に砕きます。紫のもやがこの石から急激に溢れ出ることからも、この石自体がザラスの禁呪発動のための魔導の力の源である可能性があります。
ソロンがクロニエの心臓部をえぐります。このときソロンは石の床の外側の巻き込まれないであろう位置にいます。四隅から紫のもやが溢れたあと、クロニエの体内からも同様のもやが出現します。クロニエの体内から丸い何かを引きずり出したあとそれを砕くと、紫のもやが一気に溢れ出し石の床部分全体を包み込みます。この人工紋章石のようなものに関してはこちらの記事でも議論しましたが、クロニエはタレスやソロンたちと同様の身体的な構造を持っていると言われており、この謎の石は彼らが今の姿で地上で活動するために必須の要素である可能性があります。
またこのときのソロンのセリフ「その顎を開くが良い」は単純に闇の入り口を開くという意味と考えられますが、それだけでなくこの闇自体が邪竜など何らかの生き物に由来する物理的な「顎」を開くことにも対応しているのかもしれません。後述しますがソティス自身、この闇の存在を知っているような話し方をすることを考慮すると、個人的に現在最も可能性が高いのは、ザラスの禁呪は過去ソティスがこの場所で炎の紋章を用いて封印した邪竜の中の闇の空間を開く呪文であると推測しています(ただしこれを示す十分な手がかりはないため以降特に議論はしません)。脱出のムービーで赤く見える光はまるで赤い星の輝きのように見え、古来火星のような赤い星の動きが不吉の前兆と捉えられたように、このような赤い光を背後に登場する姿はアガルタの民たちが呼ぶまさに凶星そのものです(紋章石が力を発揮するときの輝きも皆赤色です)。ただし本編中でソロンが主人公を凶星と呼ぶ初出は炎と闇の蠢動のソロンの戦闘セリフ(他には女神の行方)なので、この呼び名自体はここで赤い光を放つよりも前に天帝の剣を扱う得体の知れない先生に対してつけられたものと考えられます。タレスのシャンバラでのセリフでは「凶星、いやソティスの現身よ」と言い換えがあるため、おそらく凶星はソティスではなく味方になるかどうか不明だった状態の先生を指す言葉であり、その後緑の髪と目になったことでアガルタの民から正式に(?)ソティスの現し身だと認識されたのではないかと考えられます。(というかタレスはソティスの名を知っているんですね...)
ソティスは名前の由来と「シリウスを見上げて」という神祖ソティス関連で流れるBGMの曲名、またFEHでの奥義「天狼」からもシリウスがモチーフと考えられています。シリウスはもともとシリウスAと現在は小さくなってしまった赤いシリウスBの二つをさす天体であり、以前は赤く見えていたという説もあるそうです。英語コミュニティではこの二つの星をソティスとベレトスに重ね合わせる考察も見かけました。このように、ザラスの闇の脱出の際に放つ赤い輝き自体がシリウス、そして凶星のメタファーとして用いられているのかもしれません。
参考:赤い星と凶星との関連に関する考察ブログ様
みなさまご存知かと思われますがこちらもぜひご参考にどうぞ。
ザラス(Zahras)の名前のモチーフ
このようにソティスとただならぬ因縁が示唆されているザラスの禁呪ですが、このザラスの禁呪とは果たしてどのような背景を持つ技術なのでしょうか?
その謎に迫るためにその名前ザラスの由来について考えたいと思います。「Zahras」もしくは「Zahra」に関連する単語で、最も関連性の高いと思われるものが、ペルシャ語・アラビア語における光・輝きなどを意味する単語Zahrāです。アガルタの民たちは本編中で何度も光に関して言及をします(例:蒼月デアドラ「光よ...」、兵器光の杭 or 柱、シャンバラでの対眷属での戦闘セリフ「光を奪った」など)。そして以前世界破滅伝奇に関する考察をした際にも、「聖なる太陽」という記述が英語版に含まれており、アガルタの民たちが生前太陽や光を信仰する民であった可能性について議論しました。アラビア語などでは一般に複数形でsをつけることはないと思いますが、このsがzahraを何かしら修飾するための語であったならば、光を示すZahraである可能性は十分考えられます。そして闇に閉じ込める術がザラスでは禁じられている呪文であるということからも、「ザラス」自体は光を主体とするものと考えるのが自然なのではないでしょうか。
ここからはだいぶ妄想になりますが、このザラス自体アガルタの民たちの信仰の可能性があるのではないか(つまりザラス教のようなもの)と推測しています。というのも、アガルタの民が崇めていたものが太陽や光であったからこそ、地下都市で暮らさざるを得なくなったことで、より深い恨みを抱いていると考えると彼らの行動原理がより明確に理解できるからです。何千年と女神の眷属たちを恨み続け、地下都市を崩壊させ自分たちが死ぬことになってでも偽りの女神を打ち倒そうとしたのは、命よりも重い信仰などに由来する可能性があります。リシテアが血の実験について語る際にも「儀式」という表現をするように、アガルタの民が共通の信仰をもとに動いているというのはかなり尤もらしい仮説なのではないかと考えています。
そしてこの説に関連して、もう一つZahrasの由来候補となりうるのが、アガルタ幹部たちの名前の由来ギリシャの七賢人たちも大いに影響を受けたと言われるゾロアスター教の始祖ザラスシュトラ(Zaraθuštra)です。人によってはツァラトゥストラの名前の方が馴染みがあるかもしれません。こちらは音は似ていますが綴りの一致度が少し低く、「光」説よりは可能性が少し薄く感じています。しかしゾロアスター教の信仰対象が太陽神かつ最高神であるアフラ=マズダー(かつ火も象徴とされる)という唯一神であり、世界の歴史が光の善神スプンタ=マンユと闇の悪神アンリ=マンユの二陣営の対立であるということが、彼らに深く関連する光と闇が同時に存在することとも一致しています。発祥自体もイランやペルシャ周辺であり、光を意味する方のZahraの語源とも強い関係を持っています。またそれ以外でも、ゾロアスター教はギリシャにマギと呼ばれる星見をする神官、そして彼らの行う儀式やまじないを伝えていることから、彼らの直接の信仰ではなくとも術自体を伝えたモチーフの可能性もあるのではないかと考えられます。
以上をまとめますと、もしこれらのどれかがザラスの名の由来だった場合、ザラス自体は少なくとも光を主体とするものであり、その技術の中で禁止された反作用的な闇の技術がザラスの禁呪であると考えられます。
↓例えばこの部分はエーデルガルトの炎の紋章を指していますが、彼ら自身が炎を神聖なものとして捉えている可能性もありそうです。
アガルタの技術(1) 闇魔法と光の杭は神祖から授けられた科学技術のメタファー?
以前の記事で触れたように、ソティスは地上に降り立ったあと眷属たちとともにその技術を人間たちに伝え発展させたとされます。しかしその後絶えず争いを続けた人間たちに対して、ソティスたちは再び立ち上がり地上を絶望の水で満たし壊滅させます。ところが洪水のあとも最終的に人間たちは生き残っており、その後の世界では眷属たちと共存しながら現在のフォドラまで発展を続けてきました。もし人類による発展しすぎた科学技術が争いを引き起こすというのであれば、なぜソティスはアガルタの民たちのみを滅ぼし、その後の人間の繁栄は許したのでしょうか。
フォドラの民とアガルタの民たちを比較すると、アガルタだけが持つ独自性として、闇魔法の使い手である点があげられます。登場キャラクターが闇魔法を使えるかどうかは闇に蠢くものたちと関連があることと直結し、幹部はさらにアガルタの術という共通のスキルも持っています(そういえば闇魔法に付属するΓやΔなどはギリシャ文字なので、アガルタのモチーフがギリシャ関連であることとも一致しますね)。一方、外伝「不朽の守護者」においては、ソティスが作り上げたはずの聖墓の守りにゴーレムと共に闇魔法を使う幻影兵が出現します。このことから、実は闇魔法自体が初期ソティスによってアガルタの民たちに伝えられた能力なのではないかという仮説が立てられます。闇魔法以外にアガルタの民たちが用いる軍事技術といえば光の杭・柱ですが、翠風・銀雪で光の杭の発射の際に発せられた魔導を検知してヒューベルトがシャンバラの位置を特定したことから、この武器も魔導の力に由来することが示唆されており、光の杭も実は闇魔法の力に依存した兵器である可能性があります。
光の杭は魔導の力により信号を送ると上空からミサイルのようなものを特定の場所に落とすことのできる技術で、世界破滅伝奇や紅花ヒューベルトからは光の柱、翠風や銀雪においては光の杭と呼ばれています。これらの武器は世界破滅伝奇においては女神と思われる異形の巨躯に対しては効果がなく、また女神の加護によって守られるガルグ=マクや聖墓を攻撃した場合には弾かれてしまうことが本編中で触れられていました。このことから女神が持つ真の力よりは劣る技術であったと考えられます。
そして本編中では紅花・翠風・銀雪で発動され要塞を破壊しましたが、タレス本人が死んでしまった蒼月ではこれが発動されることはありませんでした。タレスはアガルタの民の最高指導者であるとともに、本編中で唯一最上級魔法であるメガクエイクΣを扱うことができる闇魔法の使い手です(次に上級の魔法ボーアχは蒼月ミュソンとフォドラ解放戦のモブグレモリィが使います)。また光の届かぬ都ではタレス自ら地面に手をあて光の杭を発動する瞬間がムービーに映ります。これらの事実をつなぎ合わせると、光の杭の発動にも実は高い闇魔法の技術が必要とされており、タレス以外でこれを扱える人材はおそらくそうそういないのではないかと推測されます。
ちなみにタレスの兵種アガスティアは、インド神話に登場する聖仙です。その他の幹部に関してはグレモリィやダークビショップなど、一般的な兵種が適用されています。闇に蠢くものたちに関しては、アガルタがアジアにあるとされる都市、幹部の名前がギリシャの七賢人由来とモチーフが混在していますが、ベレトスの最上級職もインド哲学に由来するニルヴァーナなので、兵種はインド縛りなのでしょうか。
さてこのように戦闘に特化した闇魔法の力をソティスが与えた・もしくは女神の技術が元になって開発されたことにより争いが絶えなくなったのであれば、地上の闇魔法技術を一度殲滅し、闇魔法を使わない人間のみでの社会を構築させたかったというのがありうる選択ではないかと思われます。実際現在のフォドラの多くの人間は闇魔法を使わず、大規模な戦闘による死者の数も大幅に減少しているのではないでしょうか。ただし、シルヴァン外伝やラファエル・イグナーツ外伝など闇に蠢くものたちの関連が薄い(ただしないとは言えない)戦闘でもダークメイジ自体は出現することがあるため、聖墓外伝での登場も単純な難易度調節の可能性もあり、闇魔法がソティス由来どうかについては今のところ十分な証拠はなく仮説段階です。しかし、少なくとも現在のフォドラではほとんどの者は扱うことができず、ルミール村のマヌエラ先生が言及するように人を狂わせることのできる「悪い力」として、認識されていることは間違いありません。
また書庫で読むことができるセイロスの書において、女神が人に与えたのは「魔の恵み」「魔道」であり、この力が邪を呼び寄せるとも書かれています。現在のフォドラでは白魔法も黒魔法も禁止されておらず、大司教であるレア自身が高い技能を示します。このことからも、「邪を呼び寄せる魔道の力」が女神から与えられた魔の恵みに基づく闇魔法だった可能性があるのではないかと推測しています。
この光の杭の名称に関連して、翠風の章のフォドラ解放戦で現れる十傑の軍勢はインドラの矢や模造武器などの主にアガルタの民の高度な技術に基づく武器を用いますが、その中でもラミーヌたち魔道士は主に闇魔法ではなく白魔法アプラクサスを用いて攻撃してきます。このアプラクサスの説明文は「対象を滅ぼす天からの光」というまるで光の杭の説明と見紛うものです。さらに光の届かぬ都でピッタコスにもアプラクサスは装備されており、闇に蠢くものたちもこの魔法技術自体は持っていたと考えられ、十傑の軍もアガルタからこの魔法を伝授された可能性があります。個人的に光の杭は特に光っているイメージもないため不思議な名付けだと思っていましたが、アガルタの民の世界で元々アプラクサスのように天から光が降る魔法が広く用いられており、それにちなんで名前がつけられたというのは自然かもしれません(世界破滅伝奇以外では現代のフォドラ人による命名ですが)。すなわち女神信仰に由来する白魔法の技術をもとに、科学技術のモチーフである闇魔法を組み合わせることで光の杭という絶大な破壊力を手に入れたのではないかというものです。
ちなみにフォドラ解放戦ではカロンがデスΓを、また難易度ルナティックではさらにグレモリィがダークスパイクとボーアを覚えており少なくとも十傑軍にも闇魔法使いは存在しています。しかし十傑たち自身は濃い女神の眷属の血を宿しているため、白魔法の方がより強い能力を発揮することができ、結果闇魔法はあまり使われなかったのかもしれません。アプラクサスとは元々人間を天国に連れていく存在であり、その存在の詳細は明らかではありませんが初出はソティスの由来と同じエジプト神話であり、ギリシャのパピルスにも登場するとのことで、エジプト由来の女神の信仰と関連する白魔法であることとも一致しているようです。
アガルタの技術(2) 紋章石と類似する砕かれた石
次に、ヒューベルトとの支援会話において、アランデル公には表と裏の二つの意志が存在しているように感じたという話があります。これは、ベレトスとソティスが別々の意識として会話をすることができた現象とも類似しています。仮にこのヒューベルトの話が正しかった場合、アランデル公にはもともと存在した人格に加えてタレスの人格が追加されたと考えられ、その場合各人に埋め込まれ、ザラスの禁呪でも利用された石がタレスの人格の植え付けに重要な役割を果たしたという可能性が考えられます。
世界破滅伝奇によるとアガルタの民たちは地上を満たした「絶望の水」から逃れるため、地下都市シャンバラで暮らすこととなりました。しかし彼らと対立していた女神の眷属たちは彼らの所在に関しては把握しておらず、こっそりと地上のどこかに拠点を構えることもできたはずです。それにも関わらず後述のように「光を奪い恒久の呪いをもたらした」と恨みを持ち続けながら地下都市で暮らし続けているのは、一体なぜなのでしょうか?
これに関して一つ考えられる説として、地上の大規模な環境の変化により、以前の人類には適応できない自然環境になってしまったと考えるとシンプルに説明できるのではないかと妄想しています。アガルタの民たちは白い皮膚や白い髪といった、地上の人間たちとは大きく異なる真の姿を持っています。またフォドラ解放戦では死者の軍勢たちが、ネメシスが倒されることによって魔力を失い太陽の下で崩れ去っていく様子が見られます。アガルタの民たちもおそらくそれ以前とは地上の環境が異なってしまったために、そのままの体では太陽のもとでは生きられない体になってしまったのではないでしょうか。水が引くまで地下で暮らすうちに光への耐性が退化してしまったということもあるかもしれません。そこで地上の人間の肉体に自分たちの精神を埋め込むことで地上でも活動できる肉体と長い寿命を手に入れた、というのが個人的仮説です。さらにこの加工自体にも魔力の結晶など何らかのリソースが必要であるため、幹部などの一部の人間だけが地上の人間の肉体を獲得することができているのかもしれません。
この後のページで、節という暦を制定したのがアドラステア帝国初代皇帝ヴィルヘルムであり、セイロス教を広めるためだとか、アドラステア帝国の権威付けだとかの理由が、書物の中には推測で語られています。6ページ目で「主(ソティス)の意向で暦を変えることを預言者セイロスから伝えられたヴィルヘルムが制定するに至った」とありますが、ソティスからレアに何かを伝えた、という描写が全ルートを通して薄い(本編ソティスが記憶喪失であるため勿論断定はできないが)ので、レアの独断でセイロス教を広めるためにヴィルヘルムに進言した可能性の方が高そう。(レアがセイロス教を広めるためにまるで手段を選ばないことは、この後の虫大全でも説明します)また、これはゲーム本編ではなく、現実世界の話なのですが、古代エジプトには「ソティス暦」というものが存在しています。紀元前2000年頃の古代エジプトの人々は、ナイル川氾濫の時期を正確に把握する必要があり、地球の公転周期に基づいて、1ヶ月を30日とする12の月と年の終わりの5日の安息日によって1年を365日と規定する太陽暦、通称「エジプト暦」を運用していました。しかし、このエジプト暦においては、実際の太陽の運行と暦のズレを補正するために現在では約4年に1度設けられる「閏年」の概念はありませんでした。その代わり、ナイル川の氾濫の時期に、日の出前の東の空に観測される恒星「シリウス」が東天へ出現する日を元日と定め、元日が年ごと移動していく移動年と呼ばれる暦法が取られていました。恒星シリウスの観測とナイル川の氾濫の時期を基準とする、閏年の存在しない古代エジプトにおける太陽暦(エジプト歴)は、閏年の存在する一般的な太陽暦(現行のグレゴリオ暦等)と区別して、恒星シリウスが古代エジプトにおいて豊穣の女神として神格化された名前、ソプデトのラテン語読みにあたる「ソティス暦」という名で呼ばれていたそうです。紀元前45年から1582年まで施行されたユリウス暦、それ以降から使われている現行のグレゴリオ暦には、4年に1度の閏年(2月29日)が存在しますが、ソティス暦は等しく毎月が30日まで存在するので、2月は他の月と同等に30日まで存在し、2月29日は閏年としては存在しません。ここで、フォドラの「節」が用いられている2月のカレンダーをそれぞれ確認してみます。
白雲の章カレンダーにだけ、2月29日が存在しています。閏年は約4年ごとであり、白雲の章と蒼月の章で5年間経過しているので、両者に2月29日が存在していないということは、フォドラの節の暦で用いられているのは、現実世界でのソティス暦ではないということが明らかです。恐らく、ユリウス暦かグレゴリオ暦でしょう。(五年の経過だけではどちらかを判断することは難しい。わかる人がいたら教えてください)
ちなみに、フォドラの世界で大地球体説はまかり通っているようです(ガルグマク2F書庫の地球儀?参照)